Home > クロエ(Ep2P The Mace of Moria)
Episode2 光輝
Prologue The Mace of Moria
−−仄かに光る光の中、暗闇を歩く−−
《……フォンティナ家の令嬢なんだから、それ以外のことなんてどうだっていいんじゃないか?》
《路頭を這う猫でもフォンティナという名前を聞けば、丁重にお辞儀をするだろうよ。クックックッ。》
《あ〜うらやまし〜! 生まれてみたらアノマラド随一のお家のお嬢様だったなんて……。》
《息子のように家を継がなければならないという責任もないし、卑しい家柄の小娘のように変な男のところに、売られるように嫁に行く必要もないじゃないか。》
《ああ。孤高なお嬢様! 高慢なお嬢様! クッックックッ。》
《確かに美しい方だけどな。だからどうしたって言うんだ?結局は世の中の事情を何ひとつ知らないお嬢様じゃないか?》
《イヒヒ。 公爵家のお嬢様だから……。》
《ケッケッケッケッ。》
《キャッ。フォンティナ家のお嬢様! クロエ様!》
《ハハハ! 陰の女王様! 女王陛下! アハハ!》
−−沢山の声が流れるように聞こえてくる−−
−−立ち止まり考え込むクロエ、その彼女に近づく1人の少女−−
『……聞こえる?
私の声、聞こえるか?』
−−クロエの右下に転移する−−
『……。
聞こえないのか……。』
−−少しずつクロエから離れていく−−
『あなたにとって私の声は、こんなにも儚い……。
そうだろう、栄光の只中にいるあなたには……。』
−−微かに声が聞こえたのだろうか、きょろきょろと不思議そうに辺りを見回す−−
『……?』
−−少し離れた場所に光ながらふわふわと浮遊する物体を見つける−−
『きらきら光っている。
蛍ではなさそうね。宝石かしら……?』
『いえ……。月もないのに宝石がそれ自体で輝くはずがないわ。
……まるで魔法のよう。』
−−光に向かい歩き出すクロエ。 ふとどこからか声が聞こえた。−−
???《……。》
−−声に気が付き、駆け寄りながら問いかける−−
『わたくしを呼んだのはあなた……?
さっきあれほど切実にわたくしの名前を叫んでいたのは……。』
???《……。》
−−それは何も答えない…… −−
−−光の球体が眩く輝き視界が戻った時、1人の少女が目の前に倒れていた−−
『……セ、セティリ……ア……?』
−−崩れ落ちるように座り込む−−
『セティ……。』
−−目の前からセティリアの姿が掻き消える。 慌てて立ち上がるクロエ−−
『セティリア!』
『……セティリア!』
『クロエ様。』
−−後方からセティリアが歩いて近づいてくる−−
『あなた……だったの?』
『……。』
『さっきから呼んでいたのはあなただったの?
あの声の主は……。』
『……。』
『答えなさい!』
『……。』
『セティリア、答えて!』
『はい……お嬢様。』
■どこかのネタバレブログさんでも仰ってますが、聞こえてたのなら返事しなさい!とか言いたくなります、クロエ様……。
あと、このセティリアの はい は答えなさいに対する返事……なんでしょうかね?やはり。■
−−セティリアの姿が掻き消える。 それと合わせるかのように 声 が聞こえてくる。−−
《……舞台が台無しになるのは防がなければ。》
《……ここから生きて出るつもりだ! いつか全てのことを直視できる日が来るまで、あきらめずに生きてやる!》
《どんな選択をすることになっても……。 それで後悔することになっても……。 大切だから戦うんだ。大切だから守りたいんだ。》
《でも心があるから、怖いから、人はそれにも関わらず勇気を出すのよ……。》
《わたしは、信じています。》
《消すことのできない傷を負って、誰かを傷つけた。 それでもあたしは生まれたことを後悔しない。》
《人は限りなく弱いけれど……それでも誰かのために戦うことができる。 だから人生に意味ができるんだ。》
《俺達は一緒に歩いて行くんだ。必ず最後の瞬間は笑えるはずだから。》
《俺は自分の運命ってやつとぶつかって、堂々と勝ってみせる。 やすやすと負ける気など、微塵もない。》
−−声を掻き消すように腕を振り下ろす−−
『うるさい!』
−−声から背を背けるように後ろを向く−−
『……わたくし以外の声なんか聞きたくない。
わたくし以外の他の者は……、自分自身の人生を生きているはずだから……。』
−−座り込む−−
『わたくしにはわたくしだけの声が必要。
わたくしだけの宿命(morie)……。寂しく自分一人の力で耐えなければならない宿命が……。』
−−白転−−
−−白転−−
『この辺にあったと思ったけれど……。』
『確かあったはず。インフェイズフェノミノンに関する本。
…………。』
『………………………………。』
『……そういえばあっちに……があったけれど……。
あれはつい1、2年前にあった……。あの事もそこで……。
…………。』
『……やめましょう。』
『インフェイズフェノミノンに関する本もこれ以上探す気分じゃないわ。
……他の人に任せることもできないし。……。困ったわ。』
−−白転−−
(ナルビクに行きたいと行ったこと、そろそろお父様のお耳に入っているでしょうに……。何もおっしゃらないわ。
まさかこの程度のことも直接申し上げなければならないのかしら。)
−−外からクロエを呼ぶ声がする−−
???《クロエお嬢様。公爵様が……。》
『ええ。すぐに行くわ。』
−−歩いて外に出入り口に向かう−−
−−暗転−−
『……確かに声が聞こえたのにどこへ行ったのかしら?
わたくしにこんな悪戯をするはずないのに。』
『…………?』
−−探そうと少し歩いた辺りで異変を感じる−−
−−白転−−
−−白転−−
『……何?
今、何かが……。』
『何かが……起こった……。』
『いやあ〜、ウワサで聞いたよりずっとステキなお嬢様ですね?
星のごとく明滅するこの幾多の光の中でも、その色があせぬすばらしい美人。』
『…………!』
−−離れた場所から怪しげな人物が嬉々としながら近寄ってくる−−
『こんにちは〜。クロエ・ダ・フォンティナ(Cloe da Pontina)様〜!!
こうしてお会いできて至極光栄……。』
『誰?
あなたの身分を明かしなさい。』
『そんなに冷たくしないでくださいね? 高い身分にふさわしい寛容さを示してください。
フフフ。』
『……あなたには悪いけど侵入者に示す寛容さはないわ。』
『世界の異変に気付いて伝えて差し上げるのは、ピッカピカの身分を持った人達ではなく、道化師の役目ではありませんでしたか?』
『世界の異変?』
『あなたのように明晰な方が、何も知らないフリをするつもりですか?』
『…………?』
『まあ知らないのでしたら仕方ありませんね。
フフフ。私は他の方を探しませんとね。もっとふさわしい方がどこかにいるでしょう。』
−−立ち去ろうとする……が不満気に立ち止まる−−
『何ですか?』
『引き止めないのですか?私が他の方を探しに行ってもよいのですか?』
『もっとふさわしい方を?』
『あなたはわたくしに用件があって訪ねて来たのでしょう?
わたくしにはそういう人間がとても多いから。クロエ・ダ・フォンティナという名前で得られないものはほとんどないから。』
『ああ、もちろん。フォンティナ家のお金と権力ならば、望むものはプラバ山の頂の花一輪でも手に入るでしょう。』
『ですが、それはお金や権力では手に入れることができませんよ。
私があなたの持ち物にそっと忍ばせたもの……。
それはあなたのアーティファクトです。あなたはそれを使わなければなりません。
そうして初めて、あなたの望むことができるでしょう。』
『望むこと……?
残念ね。わたくしは他人の思い通り動くことには興味がないの。』
『もちろんそうでしょう〜。しかしあなただけの特別な運命についてはどうですか?興味がありませんか?』
『…………。
わたくしの特別な運命を、なぜあなたから頂かなければならないのかしら?
あなたがここに来たのはわたくしが必要だからでしょう。
跪かなければならないのはわたくしではなく、あなたよ。
そうでしょう?』
『まあ、そういうことにしておきましょう。
そうしなければあなたのその限りないプライドが許さないでしょうから。』
『…………。』
『そんなに不快にならないでください。おお〜怖い。
本当に目つきだけでもひとり、ふたりは凍死させられそうですね。ふう〜。
それでも、あなたのためのアーティファクトを、私が差し上げたという事実は変わりませんよ。』
『……フォンティナの娘に、恩を売ろうというの?
哀れね。』
『ああ〜。しかしあなたなら、お金や権力で買えないものもあるということを知っておいでですね?フフフ。
あの時のあの失敗を通じて、学んだはずでしょうから。』
『……あなた、何者?』
『まだ分りませんか?
私は通りすがりの商人です〜!』
『商人……?』
『いいわ、特別に聞いてあげましょう。
わたくしに押し付けたこれは、一体何なの?』
『申し上げたでしょう?それはあなたのアーティファクト……。あなたの運命の鍵。
宿命の笏(The Mace of Moria)……。』
『まあ、私も忙しい身ですから簡単に説明をさせていただきます。
普段はこのようなサービスはしていないのですよ。ふふ。
このアーティファクト、宿命の笏(The Mace of Moria)は、あなたにふさわしいと思いましたので、こうして商人自ら渡しに来たのです。
あなたの特別な運命のために、必ず必要となるでしょう!
それを使わなければ、あなたは塔に閉じ込められたお姫様のようになります〜!
分りますか?
塔に閉じ込められた哀れなお姫様のままでいたくない、あなたの特別な運命、この世界で何人かだけが気づいた異変について探求したければ、そのアーティファクトを使わなければなりません。
その宿命の笏(The Mace of Moria)を使用したら、あなたが私の提案を受けるにふさわしい方だったと認めましょう。
さあ……それではお元気で。
またお会いできるといいですね。できるだけ、外の世界で。』
−−説明を終えると手を振りどこかへと転移して行った−−
『…………。』
『ふん。』
−−後方でセティリアがクロエに声をかける−−
『……お嬢様、こんな所にひとりでいらっしゃってはいけません。
お部屋にお入りください。』
−−セティリアの方に振り向く−−
『分ったわ。』
(本当に無礼な商人だわ。 特別な運命 を押し付けて、 世界の異変 にわたくしを巻き込むつもり?
さあ、どうしましましょう?
このアーティファクト、宿命の笏(The Mace of Moria)を使う……?
もう少し考えてみましょう。まだ時間はあるようだから。)
−−暗転−−
■何点かの複線はあるもののEP1ネタバレの少ないクロエ様のプロローグ、ここで終わりです。 ロングソードのセリフにレベル制限の件がありましたが、全力で差し替えっ!
他キャラとの絡みが少ないクロエ様なので、プロローグからしばらくは蚊帳の外ですね(寂し……)
感想を少なめにしてみました。今後公開する分はもっと減るカモ?■
→次の話、C1 Femme Fatale へ続く
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