Home > クロエ(Ep2Cp0 Femme Fatale) 1p・2p・3p・4p・5p
−− アクシピター前で待機する護衛やメイド達。 −−
『…………。』
−− 視界がクロエに接近する。 −−
(記録が消えた……?
興味深い話ね。急にあった記録が消えること……。
わたくしにとっては初めてではない。これで何回目かしら……?
ああ、知りたい。他の人達にもこんな事が何度も起こるのか。)
(誰かがわたくしに伝えたいことがあるのは間違いない。
それが特定の個人であれ、そして世界であれ。さらにはわたくしの運命だとしても、わたくしは知りたい。)
(実際こんな不親切な警告は知らないふりをしてしまうのが、気品あるお嬢様にふさわしい行動でしょうけれど。
ふふ……。わたくしを動かすに値する事かどうか、確認くらいはしてやろうかしら?わたくし自らね。)
『では、お嬢様。
ケルティカへ帰りましょう。』
−− セティリアの方を向く。 −−
『あ、ちょっと待って。
セティリア。』
『……はい?』
『はい?じゃないわよ。
気が変わったと言ったのよ。』
『日程を変えて、今日はここに泊まるわ。
発つのは明日に延ばしてちょうだい。』
『あの……。し、しかし……宿が……。
僭越ながら、泊まるに値する場所を手配できておりません。』
『宿など、どんなものでも関係ないわ。
ここにも宿屋くらいはあるはずよ。そうでしょう?』
『あるとは存じていますが……。
そんなむさくるしい所には……とても……。』
『いいからそこへ行きましょう。
わたくしは寝る場所に文句を言う子供ではないわ。』
『お、お嬢様……。』
『このあたりにある宿屋なら、海の中へという所よね?
さあ、出発するわよ。』
『…………。
……仰せのままに、お嬢様。』
□
−−暗転−−
『こ……こ……これは一体なにごと……。
ひっく!!』
『へ、部屋は二階……いや、一階か?
いや……違うか?あ……あ……あの……。』
『お嬢様、恐縮ですが大変不便だと思います。
今からでも他の所を調べたほうが……。』
『寝る場所に文句を言う子供じゃないと言ったでしょう?
わたくしは何度も同じことを言うのが好きではないわ。』
『しかし……。』
メイド2人&近衛兵:
−− クロエの元まで走り寄る。 −−
『お嬢様、恐縮ですが……。
宿屋が狭いため護衛の兵が入れません。警備に支障が……。』
『セティリアがいるから平気よ。』
『そ、そうですが……。しかし公爵様が知ったらひどい罰を……。』
−− カウンターそばまで歩く。 −−
『わたくしが平気と言えば平気なの。
さあ、もうこれ以上は聞かないわ。』
−− ためらいもせず、部屋へと向かう。 −−
メイド2人:
−− クロエが奥へと行ってしまった後。 −−
セティリア:
『セティリア様。
どうすればよいでしょう?』
−− セティリアが振り向く。 −−
『高貴なお嬢様が、こんな粗末な所で休めるはずがありません。』
『…………。
お嬢様がそう決められたのですから、私達はお嬢様の意志に従うしかありません。
これ以上、騒ぎを起こさないようにしてください。』
−− カウンターに近付く。 −−
『ご主人。
どうか今日のことは口外しないようお願いします。
つまらない噂になったら、処罰を避けられないでしょう。』
『も……もちろんですよ。
当然じゃないですか!!』
−− クロエの後を追い、部屋へと向かうセティリア。 −−
□
−−暗転−−
クロエ:
『……お嬢様、失礼します。』
−− セティリアの方を向く。 −−
『セティリア。
わたくしこの部屋に入って、本当に目に見えるものがすべてだということを悟ったわ。』
−− 部屋のベッド側に視点が移る。 −−
『あんなに近くに壁があるなんて……信じられない。
それにあの変な布がカーテンのようだわ。理解できる?』
−− 更に視点が机付近に移る。 −−
『……わたくしあの扉を開けば本物の部屋があると思ったのに、あれは閉ざされた扉だったわ。
使わない扉ってことよ。』
−− 部屋の中心へと視点が戻る。 −−
『恐縮ですが、普通の宿屋の部屋というのはこのようなものだと聞いております。
ですから……あの……、申し訳ありませんがあの扉は一種の壁だと思わなければならないでしょう。』
『知らなくて言ったわけじゃないわ。』
『申し訳ありません。』
『あなたから申し訳ないという言葉を聞く理由はないけれど?
セティリア、あなたがこの宿屋を設計したのかしら?』
『いいえ。』
−− 辺りを見回す。 −−
『……ソファーもないじゃない。
一体どこに座るのよ?』
『こちらのイスを使うか……、それともベッドを兼用に使うのではないかと思います。
そうでなければ床のあれが一種のイスではないでしょうか?』
『見識が浅くて申し訳ありません。』
『ああ、つまり一部の地域の伝統様式という座敷かしら?
ふむ……。』
−− 歩き出す。 −−
□
−−暗転−−
−− あれと呼ばれた、敷物上にある布に座り込むクロエ。机を挟んだ対面に位置する場所に立つセティリア。 −−
『それではこれで失礼します。
護衛のため、一晩中扉の前にいる予定ですので無礼をお許しください。』
『……セティリア。』
『はい?』
『あなた、昔は完全に違う性格だったこと本当に思い出せない?
何年……いえ、1、2年前のあなたはこうじゃなかった。』
『何度も申し上げたと思いますが、恐縮ながらあの日のことはまったく覚えておりません。
申し訳ありません。お嬢様。』
『あの日一体何があったのかしら?
あの日……あの部屋で……。』
−− 視線が2人に素早く接近する。 −−
□
−−暗転−−
(昔のことではない。せいぜい1、2年前。)
(……いつの時代も変わらぬことだが、アノマラドの公爵家の令嬢にとって、世の中は明るく軽快で美しいものでいっぱいだった。
わたくしに大胆にも力を突き付ける人はいなかったし。わたくしに荒々しい言葉を投げる人もいなかった。
わたくしは自分の家の庭園に咲いた花以外に、他の花を望む必要さえなかった。世界で一番美しい花はすべてフォンティナ家に咲いていたから。)
(わたくしは幼年期の春を享受していたのだ。
あの日を境に壊れてしまった……。二度と取り戻せない、長く、甘い春を。)
−−白転−−
−− フォンティナ家の庭園、噴水横に立つクロエ。声をかけられ振り返る。 −−
『お嬢様〜!これを見てください、これ〜!お嬢様!!』
『うるさいわね、セティリア。
この前もあなたの大声のせいでお母様の機嫌が悪かったじゃない。』
『あ、申し訳ありません。私はどうしてすぐ忘れてしまうのでしょう。へへ。
次からは気を付けます。
あ!とにかく、おっしゃられた通りに書庫の鍵を盗んで来ました。』
『…………。』
『盗んで来たのではなく、持って来たと言わないと。
これはわたくしの家の物で、わたくしはこの家の娘なのだから。』
『そうです、そうでした。エヘヘ。
お嬢様は何でも手に入れる資格がありますから。ヘヘ。』
『…………。』
『ところでお嬢様。書庫の鍵は何に使うのですか?』
『セティリア。鍵は扉を開けるために存在するのよ。
ならば答えは1つしかないでしょう?どうして当たり前のことを聞くの?』
『でも……、お嬢様が書庫に入りたいのなら、公爵様に申し上げて下人達に開けてくれと言えばいいでしょう?
どうしてあえて公爵様が外出中の時に鍵まで盗んで……いえ、持って来て開けようとするのか分かりません。
高貴なお嬢様がそんな事をなさる必要が……。
…あ、ええ?お嬢様〜お嬢様〜!!』
−−白転−−
『あなたは付いて来なくてもいいわ。
どこまで来るつもり?』
『で、でも……。でも私は……、私は……。』
『人の目に触れる前に戻って。』
−− 間 −−
『お嬢様!!』
−− 間 −−
『…………。』
□
−−間後暗転−−
−− 書庫入り口に立つ、クロエとセティリア。 −−
−−白転−−
−− 部屋の奥へと向かおうとするクロエ。 −−
『ああ、まったく、お嬢様〜!
わ、私も行きます。私はお嬢様のシャペロンになるつもりですから!お嬢様、いいですよね?
ね?鍵を盗んで……いえ、お持ちしたのも私ですから……。』
−− 振り返る。 −−
『……シャペロンになりたければ。舞踏会へ行く時に付いて来なさい。ここは書庫よ。
古臭い本しかないわ。』
『……でも……。』
『…………。』
『お嬢様……だめですか?
どうしてもだめなのですか?』
『…………。』
−− 諦めたように何も言わずに再び書庫の奥へと向かうクロエ。
嬉しそうにクロエの後を追うセティリア。 −−
セティリア:
−− 本棚の前で立ち止まるクロエ。 −−
『……ふう。本当に言うことを聞かない子ね。
こういう時は、本当にあなたとわたくしが同い年というのが信じられないわ。』
『おつかいをあなたにさせたのが間違いだったわ。』
『ですが私を小リスのように素早いと言ったのはお嬢様じゃないですか。
この家で私のように音を立てずに素早く動ける人はいないと……。
そう誉めてくださり、どれだけ嬉しかったか……。』
『…………。』
−− 振り返るクロエ。 −−
(あの時わたくしは、寛大なことは何でも簡単に許可することで証明できると思った。
幼かったからだ……。わたくしはセティリアにこの上なく寛大だった。
あの子がくれと言う物は惜しまず与えるほどに。)
(……それが間違いだったのだ。
わたくしの権力だけで世の中のすべての責任を負えないということをあの時知っていたら……。
知っていたらあの悲劇は起きなかっただろうに。)
(あの時わたくしは知らなかった。
”フォンティナ家の令嬢”という名でできないことはないと思った。
責任を負えないことは許可してはならなかったのに。
わたくしがセティリアの代わりに何でもやれるわけではなかったのに……。)
−− 再び背を向けるクロエ。 −−
『ぐすん……。』
−− セティリアの前を通り、階段付近へ移動するクロエ。
後を追うセティリア。 −−
『ぐすん……。』
『ふう……。』
『いいわ、出ていけとは言わない。』
−− クロエに抱きつく。 −−
『わ〜!ほ、本当ですか?
きゃあ〜お嬢様、ありがとうございます!』
『セティリア。スカートの裾にシワが寄るから軽率に抱きつかないでちょうだい。
あなたは一体わたくしを誰だと思ってるの?』
『も、申し訳ありません……。つい……。』
−− 慌てて離れる。 −−
『……いいから静かにするように。
わたくしが本気で怒る前にね。』
『はい!お嬢様、セティリアはおとなしくしています!人形のようにおとなしくしてますので、見たいだけいくらでも本を読んでください!へへ。』
(わたくしが本を読みにここまで入って来たと思っているようね。もしそうならこっそり入って来る理由などないわ。
さあ、探しましょう。秘密の門を……。)
(本の間のどこかに隠されているはずよ。本を読みながら探してみることにしよう。)
□
−−暗転−−
−− 本棚を調べる。 −−
〜 影のイウェリド、ベールに包まれた預言者 〜
影のイウェリドと呼ばれる預言者、イウェリド・ド・ローランドは最後のシエン伝承者として知られている。
彼はアノマラド王国が立つ前、大陸に大きな力を発揮した王国アケロス出身で、予言と言語学に才能を発揮した人物だ。
多くの魔法発動語を保つのに貢献した人という点も注目されるが、何より彼の名を後世に残したものは、石版形態で伝承されて来たエタの予言を判読し同名の解釈書を作成したことだ。
石版形態のエタは忘れられた古代語であるシエン(Xien)で記録されていたため、それを読んでエルト(ELT)に翻訳したということで、イウェリドがシエン伝承者だったことはほぼ定説として受け入れられている。
彼のエタ解釈書であるイウェリド・エタはその時まで噂でしかなかったシエンの伝承者が実際に存在したことを世の中に露呈しただけでなく、大変革や未来に起こる事件についての詩的な暗示が大きな衝撃を与えた。
しかしこれらのことが世に知れ渡ったのは、イウェリドが世を去った後、彼の息子の長男カフリン(kahuline)が彼の遺言によりアケロスの国王オスラー(Osler)4世にシエンで書かれたエタ石版とその解釈書イウェリド・エタを献上したからだ。
オスラー4世はエタの信憑性を明らかにし、その内容を分析するためにアケロス王立図書館の学者達に研究を指示した。
イウェリド・エタは、解釈書にもかかわらず曖昧な言語で成り立っていたため直感的にしか意味が分からなかったからだ。
〜 時空間歪曲に関する報告書ー第24章 〜
報告者:アノマラド王立科学者、ランケン・メルカルト(Ranken Melkart)
報告先:アノマラド王立学術会
周知の事実のように、領域Aと領域Bを任意に指定し比較作業をした時、ふたつの地域における差が度をこえていて、断絶と定義してもよいほど不一致を示しているところが増え続けている。
このような現象が起きているということ事実自体は、証拠として提示できるほど十分な標本を確保している最中だが、その理由をまだ明かせずにいるということが非常に残念だ。
しかし細密で慎重な実験の結果、時空間歪曲は証明するに値する標本を提示できるようになったことを喜びとともに報告する。パノザレ山脈に属すると知られている龍泉郷の峡谷の家を基点として、特定のふたつの地点の土壌と生態分析を行った結果、その場所はパノザレ山脈ではなく、ドラケンズ山脈に属するということがわかった。
空間歪曲は昔から大きな魔法の力によって人為的にも遂行されてきたことであり、大量の力を一度に放出する魔法の石を利用した大量輸送装置などの古代遺跡がその根拠です。しかし現在起きている空間歪曲はモンスターの出没とほぼ同時に起き始めた現象として不可思議な災難の一種と扱うしかないわけで……。
…………。
調査の結果、時空間歪曲とモンスター出現の原因として有力なものは、コアの露出だと言えるだろう。
要するに、内部に存在すべきコアが何らかの理由で露出し、そこから変異と空間歪曲が始まったということだ。
…………。
このランケン・メルカルトはこう結論する。
コアの露出が始まったのは、テシス自体の誤りというより外圧だと見たほうが正しいと思われる。
よって、争点になっている字空間の歪曲を防ぐためには、応急処置よりももう少し根本的な解決策を探さなければならず、これは、当該外圧が何であるかを知ることから始めないといけない……。
(ところどころ敗れた所が多く、ばらばらの情報しか手に入れられない。)
〜 イウェリドはこのまま沈黙するのか? 〜
イウェリド・エタ以降はシエンの解釈に成功した人はおらず、イウェリド本人に関わる史料も登場しなかった。
そのため多くの人々は、彼がエタの石版の内容を隠すために、石版の内容の一部だけを翻訳し暗号化してシエンの伝承を中断したのではないか考えている。
また、イウェリド・エタのうち6番目の文書は消えたと言われているが、実は初めから存在しなかったと信じる人も多い。
彼が6番目のエタ石版を意図的に解釈しなかったということだ。
…………。
疑問点は多い。
どうしてイウェリドは影として残ることを選び、死ぬ日まで世の中に予言の存在を公表しなかったのか?
影として残ろうとしたなら、なぜあえてエタの石版を翻訳し本として残したのか?
エタの内容を死んだ後に公開したかったのなら、なぜエタの石版をありのまま翻訳せず、暗示的に残し、6番目の石版を翻訳しなかったのか?
これらすべての疑問が度々提起されたが、死人に口なしだった。そしてアケロス王国が自然にアノマラドの一地方に転落し、以来その名前さえ歴史の中に消えてしまった。そしてその後アケロス王立図書館の偉大な研究は散り散りになってしまった。
〜 ユニクロン読解法(Unicrone Grammar)の意義を論ずる。 〜
現代の魔法はユニクロン読解法(Unicrone Grammar)を基本とする。
ユニクロン読解法はシエン伝承者アトレウスの娘だった魔法師、エレクトラによって提唱されたシエンの解読法だ。現代言語エルト(ELT)で古代言語シエン(Xien)を解釈。発音する方式を作ったもので、”言語”だけで魔法を具現することができるようになった。
ユニクロン読解法以前の魔法は、試薬や魔方陣などの道具に頼ったり、瞑想や修行を通じた宗教的意味が強かったが、言語を利用した魔法はより協力で効果的な威力を発揮した。これは魔法師達の立場向上に大きな影響を及ぼし、今日に至る。
…………。
ユニクロン読解法の結果として提唱された魔法語がまさにユニクロンエルト(Unicron Elt)だ。しかし本来の言語、言語の起源、そしてまた”魔法そのもの”であるシエン(Xien)に比べエルト(ELT)で表現された現代の魔法語は不完全だ。
この言語はシエンに比べて威力も劣り何より失敗確率が高い。
そのため、魔法がたびたび失敗する理由は詠唱者の能力不足という場合もあるが、言語自体の欠損もひとつの原因と言える。
ユニクロンエルトは決して真正な魔法語、シエン(Xien)ほどの威力を持てないのだ。
■ 比較的キリのいい部分で終わりました。
本棚の本の内容も記載しましたが、謎だらけですねぇ。
前回後2回くらい?とか記載しましたが、さらに後1回(6ページ目)まで続きそうな気がします。
ー追記ー
本の読み忘れ及び記入漏れがある模様?全く記憶に無いのでいずれ補完せねばです……。とりあえずこちらに記載。■
→続きの話、クロエ回想へ
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